~悩める教師が学校を救う~本会代表 明治大学文部教授 諸富祥彦

~悩める教師が学校を救う~
本会代表 明治大学文部教授 諸富祥彦

 

 今、“教師受難の時代”と言われています。学級崩壊、いじめ、不登校の増大、学力低下など、問題は山積み。子ども達、そして親たちの変化は著しく、その中で多くの教師が途方に暮れています。その一方で総合的学習への対応など、教師への要求・負担はますばかり。教師特に学級担任への眼差しは、ますます厳しいものになりそうです。

 

 考えてみれば、このような変化の厳しい時代の中では、多少うまくいかないことが出てきても当たり前。大切なのは、教師や教育関係者たちがお互いに支えあって、この困難な時代をうまく乗り切っていくことです。

 

しかし教師には、まじめで責任感の強い方が多く、自分に与えられた仕事は、自分できっちりやろうと、一人で背負い込みすぎ、追い込まれている方も少なくありません。また、不運にも、教育観などの相違もあり、同じ勤務校の中で、お互いに支えあったり相談しあったりといったことが、気兼ねなくできる同僚や管理職に恵まれていない方もいます。教師として本来、素晴らしい力を持っているのに、仲間から孤立して、不必要に自分を責め始め、ますます力を発揮できなくなっている先生方も少なくないようです。別の学校に移ることを考えたり、休職を考える先生も当然います。

 

これらのことを、教師本人の責任に帰すのは過酷すぎます。これだけ大変な時代なのです。いろんな問題が生まれてくるのが自然です。世間もマスコミでの報道などを通して今の学校現場の大変さは知っているはずです。にもかかわらず、今教師が大変だ、教師を支えよう、という具体的な動きは、あまり見られません。

 

しかし、教師自身が、安定した気持ちで自然な笑顔を浮かべることができる状態になくては、いい教育ができるはずがありません。

 

 今、必要なのは、この“教師受難の時代”に、その難局を乗り切ろうとがんばっている“先生方をバックアップする力”の存在です。教師同士のつながりももちろん大切ですが、教育関係者や地域の方などが“傍らから教師を支援する”こともできるはずです。

 

 今、この大変な時代に、先生方を支える力を大きくしよう。そのために、個々ができることをすると共に、“教師を支える”眼差しを持つことが、学校がこの難局を乗り切ることにつながり、ひいては子どもたちのためになることを社会に対してアピールしていこう。そのためのゆるやかなネットワークを作っていこう。


 そんな思いで、この度、“悩める教師を支える会”を立ち上げることにしました。会といっても、組織的にきちっとしたことをおこなおう、という計画があるわけではありません。それぞれが無理のない仕方で自分にできることをやり、そんな情報を一つにまとめてこうした活動の重要性を世間にアピールしていこう、というものです。たとえば、個別に仲間の相談に乗っている方もいるでしょう。匿名での電話相談やインターネット相談などはますます重要になってくるでしょう。

 

 私(諸富)自身は、月に1ぺん程度、教師のためのグループ・カウンセリングとコンサルテーション(作戦会議もどき)を土曜の午前に東京・神楽坂にあるカウンセリングセンター、ヒューマンギルドでおこなおうと思っています。というより、同じような悩みや、うまくいかなさを抱えた先生方に集まっていただき、井戸端会議をしていただく。そのような、セルフヘルプグループのようなものを月に一回開いてお手伝いさせていただこう。私がこれまでおこなってきた学校カウンセリングと、学校コンサルテーションの知恵を活かして、この“教師による放談会”を安全な場とすると共に、新たな作戦が得られてためになるものにしていこう。それなら私の力を有効に使えるし、無理なくできるかなぁ、と思ったわけです。

(拙著『学校現場で使えるカウンセリングテクニック』誠信書房を参照)

 

つまり、本会“悩める教師を支える会”の趣旨をまとめると以下のようになります。

1. 教師を支えるネットワークを作ろう
その悩みならあのカウンセラー、教師同士が悩みを語り合う場なら諸富のところ、インターネットならこのページ、学級崩壊しかかっているクラスをどう立て直すかはこの人に相談、といったように、情報交換し知恵と作戦を交換しあえるつながりを作っていこう。

 

2. 教師の意識を変えていこう
教師、特に小学校教師には、まじめで、自分一人で責任を背負い込んでしまいやすい人が多いようです。弱音を吐いてもいいんだ、こんな難しい時代に教師をやっているのだから、どんどん助けを求めてもいいんだ、いや「人に助けを求めるのも一つの能力なのだ」と意識を変えていく。